デモステネス
Demosthenes
ギリシア語 · 弁論・修辞学 · 弁論 · 散文・その他文芸 · 書簡作品・書簡
50 作品 · 26,844 対訳文
第三十三弁論 アパトゥリオスへの抗弁
Against Apaturius本作は、古代アテナイの商事法廷において、自身が他人の債務の保証人ではないことを主張する弁論です。原告である語り手は、被告アパトゥリオス(Apaturius)による訴訟がいかに不当であるかを論じます。発端は、アパトゥリオスとパルメノン(Parmenon)という人物の間の債務トラブルに原告が介入し、両者の間で私的仲裁の合意が結ばれたことにありました。しかし、アパトゥリオスは仲裁人アリストクレス(Aristocles)と共謀して契約書を破棄し、パルメノンの不在中に不当な欠席判決を下します。これに対し原告は、請求が長年なされなかった事実や、保証の有効期間を一年とする法律を根拠に、自身が保証人ではないと反論します。最終的に、契約書が存在しない状態での訴追の不当性と相手方の矛盾を暴き、自らの無実を法廷に訴えかけています。
弁論・修辞学5 チャンク · §1-8–§31-38473 対訳文読む →第二十七弁論 アポボス弾劾 第一演説
Against Aphobus Iデモステネスが自身の不実な後見人アポボスを相手取り、遺産横領の罪を告発するためにアテナイの法廷で行った、最初期の代表的な法廷弁論です。原告デモステネスは、若くして父を亡くした自身に代わって財産を管理すべきであった後見人たちが、いかにして莫大な遺産を食いつぶしたかを詳細に明かします。弁論の前半では、父が遺した工房、奴隷、象牙などの原材料といった詳細な財産目録と評価額を提示し、自身が最高額の納税義務者であったことを証明します。中盤では、アポボスが母親の持参金を着服し、工房の収益や原材料を隠匿した事実を、具体的な数字と証拠を挙げて暴露します。さらに、「父が隠し資産を遺した」というアポボス側の不誠実な弁解を鋭く論破していきます。結末において、デモステネスは自身が被った経済的困窮を訴え、もし敗訴すれば市民権すら失いかねない過酷な状況にあることを主張して、裁判員に正義と同情に満ちた判決を懇願します。
弁論・修辞学9 チャンク · §1-7–§62-69836 対訳文読む →第二十八弁論 アポボス弾劾 第二演説
Against Aphobus II本書は、若きデモステネスが自身の遺産を横領した不実な後見人アポボスを告発する、法廷弁論の第二部である。アポボスは、原告の祖父に国庫債務があったため遺産を賃貸に出せなかったと言い訳するが、デモステネスはこれが虚偽であり、被告らが遺言書を隠蔽していると指摘して論破する。さらに、後見人たちが結託して財産を略奪した事実を証言によって証明し、父が臨終の際に彼らを呼び出して家族と財産を委ねた厳粛な経緯を回想して、彼らの背信を強く難詰する。最後に、被告らが訴訟を妨害するために仕組んだ財産交換制度(アンティドシス)の罠をいかに回避したかを説明し、敗訴すれば自らが困窮に陥ることを訴えて、裁判員に公正な判決と同情を求める。
弁論・修辞学3 チャンク · §1-8–§17-24345 対訳文読む →第二十九弁論 アポボスへの抗弁
Against Aphobus III本作は、古代アテナイの弁論家デモステネスが、自身の遺産を横領した元後見人アポボス(Aphobus)による偽証の訴えに立ち向かうために自ら行った法廷弁論です。デモステネスは、アポボスが財産を隠匿して逃亡を企てる中、鍵となる人物ミリャス(Milyas)が奴隷ではなく自由人であることを立証し、相手方の主張を切り崩そうとします。弁論の中で彼は、アポボス側が真実の究明に必要な奴隷の拷問による検証や厳粛な宣誓を再三拒否してきた矛盾を鋭く追及します。さらに、亡父の遺言や実母の持参金、工房の資産に関する詳細な証拠を提示し、アポボスによる明白な横領の数々を暴き出します。最終的にデモステネスは、相手方が過去のあらゆる調停や裁判において敗訴してきた事実と、自身の妥協案すら拒否した不誠実さを強調し、科された多額の賠償金の正当性を法廷に訴えかけます。
弁論・修辞学8 チャンク · §1-6–§54-60795 対訳文読む →第二十六弁論 アリストゲイトン弾劾 第二演説
Against Aristogeiton II本作は、国庫への債務と市民権剥奪(アティミア atimia)の状態にありながら民会で不当に発言を続けるアリストゲイトンを弾劾する法廷弁論です。発言資格を欠く違法者を処罰することは、アテナイ国家全体の秩序と法の支配を維持するために不可欠であると論じられます。弁論はまず、被告の違法行為と、彼を罰すべき歴史的先例を提示します。中盤では、被告がかつて他の政治家を告訴した際の自己矛盾を暴き、その政治活動が国家にとって有害無益であることを実証します。最後に、宇宙の秩序とも結びついた法律の神聖さを強調し、陪審員に対してアリストゲイトンを有罪にするよう強く求めて締めくくられます。
弁論・修辞学3 チャンク · §1-9–§20-27284 対訳文読む →第三十九弁論 ボイオトスへの抗弁 第一演説
Against Boeotus I本作は、古代アテナイの法廷を舞台に、原告マンティテオスが、同じ「マンティテオス」の名を騙る異母兄弟ボイオトスを相手取って、名前の変更を求めた裁判演説です。父親がボイオトスを認知した結果、同じ父親から生まれた二人の息子が同一の名前を持つことになり、公的・私的な混乱が生じていました。原告は、同名であることによって生じる官職の抽選、軍役、裁判、国庫への債務登録といった実務的な不都合や不利益を、具体的な事例を挙げて詳細に告発します。さらに、自分が長男として父親の存命中に正式に「マンティテオス」として先に登録されたという事実を根拠に優先権を主張し、ボイオトスには祖父の名を名乗る資格がないと訴えます。最後に、ボイオトスが過去の訴訟等で自ら「ボイオトス」の名を受け入れていた経緯を指摘し、法と誓いに従って自分に有利な判決を下すよう裁判員に求めます。
弁論・修辞学6 チャンク · §1-8–§35-41636 対訳文読む →第四十弁論 ボイオトスへの抗弁 第二演説
Against Boeotus II本弁論は、アテナイの市民マンティテオスが、異母兄弟であるボイオトスらを相手に、亡き母の持参金の返還を求めて起こした裁判の訴訟演説です。原告のマンティテオスは、相手方の母がかつて偽誓を用いて父を騙し、ボイオトスらを不当に一族に登録させたという複雑な家族の背景から語り始めます。父の死後に発生した財産分割と持参金を巡る対立において、相手方が名前の不一致などを口実にして返還を拒んでいることに対し、原告は自らの母の婚姻と持参金の正当性を証拠によって証明します。さらに原告は、相手方が過去に自作自演の怪我で自分をアレイオス・パゴスに虚偽告訴したことや、亡き父を不当に中傷して訴訟を遅延させようとしている欺瞞に満ちた態度を厳しく暴露します。最後にマンティテオスは、自身の娘の持参金を確保するために父の遺産である家を守る正当性を訴え、陪審員に対して証拠に基づいた公正な判決を強く要求します。
弁論・修辞学8 チャンク · §1-9–§56-61593 対訳文読む →第五十五弁論 カリクレスへの抗弁
Against Calliclesこの作品は、隣人間の土地境界と水害による損害賠償を巡って争われる、古代アテナイの法廷弁論です。訴えられた側の被告が、隣人であるカッリクレスから提起された不当な訴訟に対して自己の正当性を主張します。弁論の中で被告は、かつて自身の父親が土地を守るために石垣を築いた経緯を説明し、そこが公共の水路ではなく私有地であることを、古い墓や樹木などの物証をもって論証します。さらに、カッリクレス自身に道路を勝手に狭めた過失があることや、彼の主張する被害が極めて軽微であることを指摘します。最終的に被告は、この訴訟が自らの土地を不当に奪うために仕組まれた卑劣な陰謀であることを暴露し、裁判官に対して正義に基づいた無罪の判決を求めます。
弁論・修辞学4 チャンク · §1-10–§27-35451 対訳文読む →第五十二弁論 カリッポスへの抗弁
Against Callippus本作は、亡くなった外国の商人がアテナイの銀行に預託した金をめぐり、高名な銀行家パシオンの息子が、不当な返還を要求するカリポスを相手に自らの正当性を訴える法廷弁論です。事の発端は、ヘラクレア出身の商人リュコンが死亡し、パシオンの銀行からケピシアデスという人物へ預託金が支払われたことに始まります。被告であるカリポスは、パシオンが心身ともに衰弱するのを待ってから不当な私的仲裁を仕掛け、金を自らに支払うべきであったと主張して訴訟を起こしました。これに対し原告は、リュコンとカリポスには親交がなく、預託自体が銀行に対して直接なされた事実を提示します。さらに、父パシオンや関係者の証言、双方の社会的地位や品格の相違を挙げることで、相手の主張の矛盾と不条理さを浮き彫りにします。最終的に原告は、過去の仲裁手続きの不当性を暴きつつ、裁判員に対して無罪判決を求めて弁論を締めくくります。
弁論・修辞学4 チャンク · §1-7–§25-33371 対訳文読む →第五十四弁論 コノン弾劾
Against Conon本作は、アテナイの市民アリストンが、被告コノンとその息子たちから受けた暴力行為に対して正義を求める法廷弁論(演説)です。原告アリストンは、守備任務中に始まったコノンの一家からの嫌がらせと、その後にアゴラで起きた凄惨な暴行事件の詳細な経緯を、医師や目撃者の証言を交えて陪審員に訴えかけます。被告側が事件を「若気の至り」として軽視しようとするのに対し、アリストンは法が暴力を厳しく禁じている意義を説いて反論します。さらに原告は、コノンが仲裁手続きを不当に引き延ばし、偽証者を動員して罪を逃れようとしている実態や、彼の不道徳な過去を暴いていきます。最後にアリストンは、厳粛な誓いとともに被告の不道徳性を糾弾し、陪審員に対して厳正な裁きを下すよう求めて弁論を締めくくります。
弁論・修辞学6 チャンク · §1-6–§38-44611 対訳文読む →第五十六弁論 ディオニュソドロス弾劾
Against Dionysodorus本作は、古代アテナイの法廷における海上貸付契約をめぐる紛争を扱った法廷弁論です。原告は被告ディオニュソドロスに対し、資金を借り受けながら契約通りにアテナイの港ペイライエウスに帰還せず、別の航路で穀物を不当に転売して不法な利益を得た行為を告発します。弁論の中で原告は、船の破損や他債権者との合意といった被告側の弁明の矛盾を一つずつ論破し、契約の厳格な不履行を証明していきます。さらに、被告が一部の返済のみを盾に契約書の全面破棄を強要した破廉恥な態度を強く非難します。最終的に原告は、契約の絶対性を擁護することがアテナイの海上交易の維持と国益に不可欠であることを訴え、共同訴訟人としてデモステネスを召喚して審判を委ねます。
弁論・修辞学7 チャンク · §1-7–§44-50629 対訳文読む →第五十七弁論 エウブリデスへの抗弁
Against Eubulides本作は、アテネ市民権の再審査において区名簿から除外された話者エウクシテオスが、主謀者エウブリデスによる不当な告発に対して自らの市民権の正当性を主張する法廷弁論です。話者はまず、エウブリデスがハリムス区の投票で意図的に時間を引き延ばし、不正な手続きによって自分を市民名簿から排除した経緯を詳述します。自らの正当性を証明するため、話者は父方・母方双方の親族の系統を詳細に辿り、多数の親族や同族、区民の証言を提示します。特に、母が市場で働いていたことや乳母をしていたことをもって外国人や奴隷と中傷された点に対し、貧困による困窮を釈明しつつ、彼女が正当な市民であることを強く立証します。さらに、自身がかつて区長を務めた際に公金回収をめぐってエウブリデスらと対立したことが、この陰謀の動機であると暴き出します。最終的に、アテネ市民として一貫して生きてきた自らの生涯を提示し、陪審員に対して正義の判決を仰ぎます。
弁論・修辞学9 チャンク · §1-8–§63-70980 対訳文読む →第三十五弁論 ラクリトスへの抗弁
Against Lacritus本作は、海上貸借契約の不履行をめぐり、ファセーリス人の被告ラクリトス(Lakritos)に対してアテナイの法廷で提起された民事の商業訴訟(ディケー・エンポリカ)の弁論です。原告は、ラクリトスが有名な修辞学者イソクラテスの弟子という肩書を利用して信頼させ、多額の資金を詐取した経緯を暴き出します。弁論の前半では、契約書に定められた担保の葡萄酒がほとんど船に積まれず、復路の荷も皆無であったなど、度重なる契約違反が客観的証言を交えて詳細に論証されます。後半では、被告らがアテナイの正規の港を避けて停泊し、難破を言い訳にして返済を免れようとする欺瞞が厳しく糾弾されます。原告は、ラクリトスがソフィスト的な詭弁を用いて法廷を欺こうとしていると警告し、海上交易の安全と法律の威信を守るため、陪審員に厳格で正しい判決を下すよう強く求めて締めくくります。
弁論・修辞学7 チャンク · §1-10–§49-56625 対訳文読む →第四十四弁論 レオカレスへの抗弁
Against Leochares本作は、古代アテナイの法廷を舞台に、アルキアデスという人物の遺産相続権をめぐって争われる法廷弁論です。原告である語り手は、対立相手のレオストラトスとその息子レオカレスによる不当な遺産占有と虚偽の異議申し立てを激しく非難します。弁論はまず、原告自身がアルキアデスに最も近い男系の親族であることを詳細な家系図と法律を用いて論証することから始まります。続いて、女系にあたる相手方が三世代にわたって違法な養子縁組を繰り返し、不当に財産を維持し続けてきた経緯が暴露されます。さらに原告は、アテナイの法律を引用しながら、養子が新たな養子をとることの違法性や、相手方の主張における矛盾を厳しく追及します。最終的に、相手方の強欲さと不当な手続きを暴き、男系最親族としての正当な権利を主張して、裁判員に公正な判決を求めます。
弁論・修辞学8 チャンク · §1-9–§60-68824 対訳文読む →第三十八弁論 ナウシマコスおよびクセノペイテスへの抗弁
Against Nausimachus and Xenopeithes本作は、かつて成立した和解と免責を無視して再び訴訟を提起した親族(ナウシマコスとクセノペイトゥス)に対し、被告がその不当性を訴える法廷弁論(抗弁)です。被告である語り手はまず、原告たちが過去に後見に関する一切の請求を放棄して和解した事実を提示し、今回の訴訟の受理自体が違法であることを主張します。続いて、原告たちが主張する新たな債権請求の矛盾を家族の歴史や債務者との関係から論証し、彼らの告訴が過去の主張と整合しないことを暴き出します。さらに、5年の出訴期限(プロテスミア)を定める法律や、和解の絶対的な拘束力を示すことで、原告たちの不当性を法的観点から補強します。最終的に、原告側の財産の浪費や悪意を告発し、陪審員に対して被告の財産を守る公正な判決を下すよう求めて弁論を締めくくります。
弁論・修辞学4 チャンク · §1-8–§24-28390 対訳文読む →第五十三弁論 ニコストラトスへの抗弁
Against Nicostratus本演説は、古代アテナイの法廷を舞台に、話者アポロドロスが、かつての隣人ニコストラトスとその兄弟アレトウシオスによる裏切りと不法行為を告発する訴訟弁論です。事の発端は、アポロドロスが捕虜となったニコストラトスを救うために多額の身代金を援助したことにあります。しかし、自由の身となったニコストラトスは恩義に報いるどころか、アポロドロスの財産を騙し取るための陰謀を企て、不当な国庫債務登録や物理的な襲撃にまで及びました。これに対し、アポロドロスは報復として、アレトウシオスが所有する奴隷を国家に没収されるべき財産として登録する法的手段をとります。本演説の後半において、アポロドロスは問題の奴隷が確かにアレトウシオスの所有物であることを証拠や証言によって立証し、彼らの不誠実さを暴きつつ、財産没収の正当性を裁判員に強く訴えます。
弁論・修辞学4 チャンク · §1-6–§21-29324 対訳文読む →第四十八弁論 オリュンピオドロス弾劾
Against Olympiodorus本作は、親族コモンの遺産分配をめぐり、アテナイの法廷で原告が共同相続人であるオリンピオドロス(Olympiodorus)の裏切りを告発する法廷弁論です。当初、両者は紛争を避けるために遺産を等分する契約を結びましたが、遺産の奴隷による金銭窃盗や他者からの請求など、度重なるトラブルに直面します。二人は一時的に協力して遺産を奪還するものの、勝訴した途端にオリンピオドロスは契約を破って財産を独占してしまいます。原告は、かつて自分が合意を守るために不利益を甘受したことを示し、被告が様々な虚偽の口実を用いて分配を拒んでいる現状を非難します。さらに原告は、封印された契約書の開封を要求するとともに、被告が娼婦に惑わされて生活を乱し親族を放置している不道徳さを暴露します。自身の家族の窮状を訴えつつ、法廷での公正な判決を求めて弁論を結びます。
弁論・修辞学7 チャンク · §1-7–§51-58662 対訳文読む →第三十弁論 オネトルへの抗弁 第一演説
Against Onetor I本作は、語り手が元後見人アフォボスとの裁判で勝訴した後に生じた、アフォボスの義兄弟オネトルとの土地引き渡しをめぐる紛争を扱う法廷弁論です。オネトルは、アフォボスと離婚した姉の持参金の返還請求を口実にして、語り手が獲得すべきアフォボスの土地を不当に占拠しています。これに対して語り手は、アフォボスとオネトルの間で実際には持参金の支払いは行われておらず、離婚自体も財産隠しを狙った偽装であると主張します。語り手は、高額な持参金取引に証人が同席していない不自然さや、離婚後もアフォボスが妻と同居し土地を耕し続けている事実を次々と提示します。さらに、オネトルが真実を明らかにするための奴隷の拷問検証(バサノス)を頑なに拒否したことを批判します。一連の論証を通じて、語り手はオネトルらの欺瞞を暴き、自らの正当な権利である土地の回収を訴えます。
弁論・修辞学5 チャンク · §1-8–§32-39399 対訳文読む →第三十一弁論 オネトルへの抗弁 第二演説
Against Onetor II本作は、若きデモステネスが、自身の遺産を不当に占有した元後見人アフォボスと、その共謀者であるオネトルを相手に戦う法廷弁論である。前作に続き、デモステネスはオネトルが主張するアフォボスの土地に対する担保権(horoi)の虚偽性を暴くことを目的とする。デモステネスは、オネトルがアフォボスの財産隠匿を手助けするために、偽の持参金を口実にして都合よく主張を変遷させていることを告発する。さらに、持参金の額をめぐる前言不一致や、アフォボスによる債務保証の矛盾、さらには担保設定時期の不自然さを次々と指摘していく。自身の正当な遺産が相手方の婚姻以前から不当に占有され続けている事実を改めて浮き彫りにし、オネトルの主張が身勝手な欺瞞に満ちていることを厳しく糾弾する。
弁論・修辞学2 チャンク · §1-8–§9-14178 対訳文読む →第三十七弁論 パンタイネトスへの抗弁
Against Pantaenetusデモステネスの法廷弁論に数えられる本作は、アテナイのラウレイオン鉱山をめぐる金銭融資と担保財産の売却を背景とした、被告ニコブロスによる特別抗弁(パラグラペー)である。原告パンタイネトスが提起した訴訟に対し、被告はすでに当事者間で法的な免責と和解(アパッラゲー)が成立していることを盾に、この裁判自体の不適法性を主張する。弁論の中でニコブロスは、複雑な担保契約や売却手続きの実態を解き明かし、原告による暴行や鉱山法違反の告発がいかに虚偽で管轄違いであるかを理路整然と論証する。さらに、原告がかつて別の裁判でも欺瞞的な手段で勝訴した事実や、奴隷の拷問要求をめぐる卑劣な駆け引きを暴露し、原告の道徳等への信用を失墜させようと試みる。自身の無愛想な態度に対する陪審員の偏見を警戒しつつも、被告は最後に、一度合意された和解の不可逆的な法的重みを強調し、不当な再訴訟を退けるよう訴えかけている。
弁論・修辞学8 チャンク · §1-7–§53-60938 対訳文読む →第四十二弁論 パイニッポスへの抗弁
Against Phaenippus本作は、古代アテナイの法廷で用いられた、財産交換手続き(アンティドシス)をめぐる弁論です。原告である語り手は、鉱山事業の失敗により困窮していると主張し、裕福でありながら公的奉仕(レイトゥルギア)を怠ってきた被告フェニッポスを告発します。原告は、フェニッポスが財産目録の提出を引き延ばし、領地の封印を破るなどの不法行為を行ったと主張します。さらに、フェニッポスが母の持参金や架空の債務をでっち上げて財産を隠蔽しようとしていると厳しく批判します。原告は、相手の領地が当初の無借金の状態で引き渡されるなら自身の全財産を諦めてもよいという大胆な妥協案を提示しつつ、不誠実な富裕者を罰し、困窮した自分に救済の手を差し伸べるよう裁判員に切実に懇願します。
弁論・修辞学5 チャンク · §1-5–§27-32481 対訳文読む →第三十四弁論 ポルミオンへの抗弁
Against Phormio本作は、海上交易の貸付金をめぐる契約違反に対して、原告が被告フォルミオンを訴えた古代アテナイの法廷弁論です。原告は、フォルミオンがボスポロスでの取引において、契約された貨物を船に積まず資金を不当に流用したこと、さらに難破事故の後に「返済は済んだ」という虚偽の主張を始めたことを告発します。弁論の中盤では、船主ランピスを巻き込んだ被告側の返済主張がいかに不合理であるかが、金利計算の矛盾や証人の不在、買収による偽証の経緯から具体的に暴かれます。また、ランピスが穀物危機下のアテナイを裏切って他都市へ密売を行っていた重大な背信行為も暴露されます。最終的に原告は、自身のアテナイへの誠実な貢献をアピールしつつ、海上貸付の厳格な法的保護が商業都市アテナイの繁栄を支える基盤であることを訴えて、裁判員に公正な判決を求めます。
弁論・修辞学7 チャンク · §1-7–§46-52648 対訳文読む →第五十弁論 ポリュクレスへの抗弁
Against Polycles本作は、古典期アテナイにおける三段櫂船の装備(トリアラキア)の費用と任務の引き継ぎをめぐる、アポロドロスによる法廷弁論である。原告アポロドロスは、国家の危機に際して多大な私財を投じて船隊を維持し、自身の任期終了後も、後任であるポリュクレスが引き継ぎを頑なに拒否したため、やむなく自費で任務を継続したと主張する。弁論の中で、アポロドロスは過酷な航海や資金繰りの苦難、さらには将軍ティモマコスとポリュクレスの癒着や、不当な命令への抗議など、自身を取り巻いた政治的・財政的な窮状を克明に暴露していく。個人の困窮や家族の不幸を顧みず公務を優先した自らの忠誠心を強調しながら、彼は裁判員に対して、義務を怠った被告への非難と、未払い費用の回収を訴えかける。国家への奉仕制度が抱える現実的な摩擦と、当時の政治的対立が生々しく描かれた作品である。
弁論・修辞学9 チャンク · §1-7–§61-68733 対訳文読む →第四十一弁論 スプディアスへの抗弁
Against Spudias本作は、古代アテナイの法廷において、原告が義兄弟であるスプディアスを相手取り、亡き義父ポリュウクトスの遺産相続を巡って争う法廷弁論です。原告は、義父の死によって生じた持参金の未払いや、義父に対するスプディアスの未返還の負債などの背景を詳細に説明します。弁論の中で原告は、スプディアスが事前の和解や私的仲裁を拒否した不誠実な態度を指摘し、多数の証人や義母の遺した覚書といった客観的な証拠を提示します。また、スプディアス夫妻が事前に遺言の内容を承諾していたことを示し、彼の弁明の矛盾を暴いていきます。最終的に原告は、双方の受け取った持参金額を比較することでスプディアスの不当性を暴き、法廷で偽証を企てる相手を厳しく非難して自身の正当性を訴えかけます。
弁論・修辞学4 チャンク · §1-8–§24-30391 対訳文読む →第四十六弁論 ステパノス弾劾 第二演説
Against Stephanos II本作は、アポロドロスが亡父パシオンの遺言書に関して、偽証を行ったとされるステファノスを追及する法廷弁論である。原告のアポロドロスは、ステファノスが遺言書の作成や開封の場に居合わせていないにもかかわらずその写しを本物と証言した行為を、伝聞証言に関する法的な制限を用いて厳しく批判する。さらに、父パシオンの死と解放奴隷フォルミオンの市民権獲得の時系列の矛盾から遺言書自体が偽造であると指摘し、父にはそのような遺言を遺す法的権利がそもそもなかったことを論証する。また、真相究明のための女奴隷の拷問(バサノス)による検証を相手方が拒んだ事実を証拠として提示する。結末に向けては、女相続人の所有手続きを怠ったフォルミオンの不法性と、これに加担して遺言書を偽造したステファノスの罪を改めて追及し、被告の有罪を訴える。
弁論・修辞学4 チャンク · §1-8–§22-28374 対訳文読む →第五十八弁論 テオクリネス弁論
Against Theocrines本作は、アテナイの法廷で若き告発者が、悪名高き「シコファンテス」(密告者・職業告訴人)であるテオクリネスを不法行為の数々で弾劾する弁論です。原告の若者は、自身の父親がテオクリネスによって巨額の罰金を科され、法的な発言権を奪われたという個人的な窮状から訴訟に踏み切りました。弁論の中で原告は、テオクリネスが公金を横領して国に債務を負っていることや、賄賂を受け取って数々の公訴を不法に取り下げていた実態を、具体的な証言や法律に則って暴露していきます。さらに、テオクリネスが「法の番人」を気取りながら、裏で他の政治家や職業告訴人と結託している偽善を暴きます。最終的に原告は、アテナイの国政を蝕む密告者たちの有害性を強く非難し、陪審員たちに正義の判決と被告への厳罰、そして不当な困窮に陥った自身の家族の救済を求めて弁論を締めくくります。
弁論・修辞学9 チャンク · §1-9–§63-70927 対訳文読む →第四十九弁論 ティモテオスへの抗弁
Against Timotheus本作は、銀行家パシオンの息子アポロドロスが、アテナイの著名な将軍ティモテオスに対し、父から借り入れた多額の債務の返済を求めて起訴した法廷弁論です。原告アポロドロスは、かつてティモテオスが政治的・財政的な窮地にあった際、パシオンから受けた多大な援助への恩義を忘れ、借用を否認している不誠実さを激しく非難します。弁論の中盤では、正確な銀行の台帳記録や状況証拠、証人の証言を交え、木材の運賃や銀杯の代金といった具体的な債務の発生過程が緻密に説明されます。アポロドロスは、借金は部下のものであるとするティモテオス側の反論の矛盾を次々と暴き、被告が不利な証言を避けるために従者の引き渡しすら拒んでいる実態を暴露します。最終的に、被告の数々の不誠実な虚偽と過去の偽誓を指摘し、裁判員に対して正当な貸金の回収を支援するよう訴えて弁論を締めくくります。
弁論・修辞学9 チャンク · §1-8–§63-69638 対訳文読む →第三十二弁論 ゼノテミスへの抗弁
Against Zenothemis本作は、古代アテナイの商事裁判における異議申立(パラグラペー)をめぐる法廷演説です。話者は、相手方であるゼノテミスとの間に裁判要件を満たす契約が存在しないことを主張し、訴訟の却下を求めます。議論の発端として、ゼノテミスと船主が企てた、海上で船を故意に沈没させて借入金をだまし取ろうとした海上保険詐欺の陰謀が暴露されます。船が難を逃れてアテナイに到着すると、ゼノテミスは小麦の所有権を主張して訴訟を起こしますが、話者は彼が港湾の不良グループと結託して嘘を重ねている実態を痛烈に批判します。さらに、事態の真相究明のためのシラクサへの照会をゼノテミスが拒否したことや、本来の買い手であったプロトスまでもが買収された経緯が明かされます。最終的に話者は、アテナイへの穀物輸入を妨害したゼノテミスには告訴の権利がないことを示し、裁判員に対して訴訟の不当性と却下を強く訴えかけます。
弁論・修辞学4 チャンク · §1-8–§25-32411 対訳文読む →第十一弁論 ピリッポス書簡への返答
Answer to Philip's Letter本書は、マケドニア王フィリッポス2世の敵対的行為に対して、アテナイ市民に断固たる決戦の覚悟を迫る政治弁論です。演説者はまず、フィリッポスの和平提案の不誠実さを暴露し、マケドニアとその同盟国の間にある不信感や、彼らの国力の潜在的な脆弱性を分析します。続いて、一見成功しているように見えるマケドニアの内部では、王の過剰な名誉欲と臣下たちの不満による利害の不一致が生じていることを指摘します。最後に演説者は、アテナイが歴史的優位にあるにもかかわらず劣勢に立たされているのは、市民の怠惰と言葉だけの消極性に原因があると痛烈に批判します。そして、口先だけの平和を捨て、具体的な軍事行動と自己犠牲を伴う戦争への備えを即座に固めるよう強く訴えかけます。
弁論・修辞学3 チャンク · §1-8–§16-23171 対訳文読む →第三十六弁論 ポルミオン擁護
For Phormion本作は、古代アテナイの著名な銀行家パシオンの解放奴隷であり、その事業を継いだフォルミオンを被告とし、パシオンの長男アポロドロスが起こした金銭請求訴訟に対する抗弁(パラグラペ)の弁論です。フォルミオン自身の弁論能力の不足を補うため、代理の弁論者が法廷で意見を述べます。弁論はまず、パシオンの死後に交わされた銀行や工場の賃貸契約、および遺言と財産分割の経緯を詳細に説明します。中盤では、原告アポロドロスが過去に一度フォルミオンと和解し、訴えを免除していた事実や、出訴期限法に違反していることを指摘し、彼の主張の法的な不当性を暴きます。さらに、アポロドロスがすでに莫大な遺産を受け取って浪費している一方で、フォルミオンが誠実に銀行を維持してきたことを証拠を挙げて対比します。結末では、自らの出自も奴隷であるアポロドロスがフォルミオンの出自を侮蔑する不条理さを批判し、陪審員に対して誠実なフォルミオンの無罪と救済を懇願して締めくくられます。
弁論・修辞学8 チャンク · §1-8–§54-62840 対訳文読む →第十五弁論 ロドス人解放のために
For the Liberty of the Rhodians本書は、アテナイの政治家・弁論家デモステネスが、カリアの支配下で民主政を奪われたロドス島の人々を救うため、アテナイ市民に軍事支援を訴えかけた政治演説です。かつてアテナイに敵対したロドス人を救うべきかという議論に対し、デモステネスは彼らの救援がアテナイの国際的名声と安全保障に資すると主張します。彼はペルシア王やカリアの女王アルテミシアの介入を恐れる必要はないことを歴史的先例から論証し、民主政国家同士の連帯の重要性を説きます。さらに、他国における民主政の崩壊は、長期的にはアテナイ自身の民主政を脅かすものであると警告します。最後に、国内の親ペルシア派や親寡頭政派の政治家たちを厳しく批判し、アテナイ人に対して祖先の栄光に見合う勇気ある決断を下すよう促しています。
弁論・修辞学4 チャンク · §1-10–§27-35422 対訳文読む →第十六弁論 メガロポリス市民について
For the People of Megalopolis本書は、古代ギリシアの弁論家デモステネスがアテナイの民会で行った、メガロポリス(アルカディア地方の都市)への軍事支援をめぐる政治演説である。当時、メガロポリスはスパルタからの侵略の脅威に晒されており、アテナイに同盟を求めていた。デモステネスは、アテナイの安全保障にとって最善の道は、スパルタとテーバイという二大強国がいずれも過度に強大化しないよう「勢力均衡」を保つことであると論じる。彼は、対立する弁論家たちの偏った意見を批判し、メガロポリスを救うことがアテナイの伝統的な「弱者救済」の正義に適うものであると主張する。さらに、スパルタの領土的野心を警戒し、メガロポリスとの同盟こそが長期的にはアテナイの国益に資することを説く。演説は、正義と現実的な安全保障政策を両立させ、賢明な介入を行うようアテナイ市民に求めて締めくくられる。
弁論・修辞学4 チャンク · §1-9–§25-32317 対訳文読む →書簡集
Letters本作は、古典期アテナイの弁論家デモステネスが、主に自身の亡命期に祖国のアテナイ市民や個人に向けて執筆したとされる書簡集です。全6通の書簡を通じて、祖国の政治的危機の克服、自身の冤罪の証明、そして帰国への懇願が強く訴えられます。第1書簡では、ギリシアの解放と一致協力を市民に促し、旧体制派への寛容を求めます。続く第2書簡から第4書簡では、自身の無実と過去の功績を詳細に回顧しつつ、政敵による中傷を退け、正当な帰還を認めさせるための弁明が繰り広げられます。また第3書簡では、亡き同志リクウルゴスの遺児の不当な扱いに対する怒りも表明されます。これら一連の書簡は、困難な亡命生活にあっても変わらぬ祖国への好意と忠誠、そして市民の良識に語りかける熱烈な自己弁護の記録となっています。
散文・その他文芸14 チャンク · §1.1-1.7–§6.1-6.21,093 対訳文読む →第七弁論 ハロンネソスについて
On Halonneus本作は、マケドニア王フィリッポス2世から送られた書簡に対し、アテナイの演説者が民会で語りかける政治弁論です。主題は、エーゲ海のハロンネソス(Halonnesus)島の帰属や通商条約の修正を巡る、マケドニアの欺瞞的な外交政策の告発とこれに対する強硬姿勢の呼びかけです。演説者はまず、フィリッポスが島を「返還」ではなく「贈与」と称してアテナイを懐柔しようとする外交の不当性を暴きます。続いて、ポテイダイアやアンフィポリスなどの係争地における不法行為を詳述し、海賊対策を口実にしたマケドニアの海上支配権拡大の企みに警鐘を鳴らします。最後には、条約違反の領土占領やアテナイの在外代理人の処刑などを告発しつつ、アテナイ国内で敵国を利する売国的な親マケドニア派の政治家たちを強く糾弾して締めくくります。
弁論・修辞学5 チャンク · §1-9–§37-46435 対訳文読む →第十三弁論 制度について
On Organization本作は、古代アテナイの政治状況を背景に、国家組織の再建と市民精神の変革を訴えかける政治弁論である。演説者は、目先の分配金に惑わされる民衆に対し、市民自らが軍役に服することの重要性を説き、軍事力の組織化と同盟国との関係改善を強く要求する。さらに、私利をむさぼる現代の政治指導者たちの怠慢や派閥政治が民主政を内部から崩壊させていると厳しく批判する。これに対比されるのが、私邸を慎ましく保ち、勝利を国家の功績とした先祖たちの栄光ある歴史である。決議を行うだけで実行に移さない現在の市民を鋭く告発しつつ、かつての誇りにふさわしい実力を備えるか、さもなくば身の程を知るべきであると諭し、まずは民衆自身が善き志を持つことを促して締めくくられる。
弁論・修辞学5 チャンク · §1-7–§29-36405 対訳文読む →第八弁論 ケロネソス情勢について
On the Chersonese本作は、マケドニア王フィリッポス2世による脅威が差し迫る中、アテナイの民会で発えられた政治演説です。弁者デモステネスは、トラキアのケルソネソス地方で活動する将軍ディオペイトヘスの軍事行動を擁護し、マケドニアの軍実に優位を許しているアテナイの現状に強い警告を発します。彼は、戦争を回避しようとする親マケドニア派の欺瞞を暴き、フィリッポスがすでに実質的な戦争状態を仕掛けている現実を直視するよう市民に迫ります。さらに、自らの市民的義務を怠りながら将軍を弾劾する民会の矛盾を鋭く批判し、国家の防衛力を維持するための常設軍の組織や財政支援の必要性を説きます。最後にデモステネスは、民衆への安易な迎合を排し、国家の最善のために発言する真の勇気を示しながら、具体的な軍事対策と実行をアテナイ市民に強く促して演説を締めくくります。
弁論・修辞学8 チャンク · §1-10–§70-77784 対訳文読む →第十四弁論 シュンモリアーについて
On the Navy Boards本作は、古代アテナイの弁論家デモステネスが、ペルシア王との性急な開戦を戒め、自国の軍備体制を整えるよう市民に訴えかけた政治演説である。デモステネスは、性急な行動は他国との連帯を妨げると警告し、まずは「海軍委員会(シュンモリア)」の増員と編成改革という、具体的かつ現実的な軍備近代化計画を提示する。演説の中で彼は、300隻の軍船や徴税区の割り当てに関する緻密な財政・軍事改革案を詳しく説明する。また、ペルシア王の膨大な資金力への過度な懸念を退け、真の危機が迫ればアテナイ市民は進んで資金を出し合い、団結して立ち上がるであろうと主張する。最終的に彼は、ギリシア世界の調停者としてのアテナイの役割を強調し、不必要な先制攻撃を避けて確実な自発的防衛体制を維持すべきだという結論を導いている。
弁論・修辞学5 チャンク · §1-8–§34-41496 対訳文読む →第五弁論 講和について
On the Peace本演説は、マケドニア王フィリッポス2世との講和(フィロクラテスの平和)後のアテナイにおいて、平和条約を維持すべきか否かを民会で説得する政治弁論です。冒頭でデモステネスは、事後にしか熟議を行わない市民の悪癖を批判しつつ、自身の過去の予言が的中した実績を挙げて自説の信頼性を主張します。中盤では、自身の先見の明が私利私欲のなさに基づいていることを強調し、諸都市がアテナイに対して共同参戦する口実を与えないよう、現行の平和条約を遵守すべきだと説きます。終盤では、ギリシア諸国家の複雑な利害関係とアテナイが孤立する危険性を冷静に分析します。そして、デルポイの神殿管理権を巡る'空虚な名誉'のために、全ギリシアの諸国家を敵に回す無謀な戦争を始めるべきではないと訴え、現実的な妥協による平和の維持を結論づけます。
弁論・修辞学3 チャンク · §1-9–§18-25242 対訳文読む →第十七弁論 アレクサンドロスとの盟約について
On the Treaty with Alexander本作は、マケドニア王アレクサンドロスとの間で結ばれた「共通の平和(コイネー・エイレーネー)」の条約をめぐり、アテナイ市民に向けて行われた政治演説である。演者は、マケドニア側がメッセネへの僭主の復帰やペレネにおける民主政の打倒など、条約が保障する諸都市の自由と自治に反する数々の違法行為を行っていると告発する。さらに、海上輸送の妨害やアテナイのピレウス港への違法な進入など、具体的な条約違反の実態を厳しく弾劾する。演者は、国内のマケドニア支持派がアテナイ側にのみ一方的な条約遵守を求める不条理を批判し、アテナイが今なお保持する海上覇権を背景に、自衛と権利回復のために立ち上がるべきだと説く。そして、条約の規定に基づき、違反者であるマケドニアに対して武器を取り、正当な戦いに打って出ることを強く呼びかける。
弁論・修辞学4 チャンク · §1-8–§24-30285 対訳文読む →第五十一弁論 三段櫂船奉仕役への冠について
On the Trierarchic Crown本作は、古代アテナイにおける三段櫂船の装備義務(トリエラルキア)を巡り、その功績を称える「冠」の授与を要求する法廷弁論です。話し手は、自分が誰よりも早く装備を完了させて国家への義務を果たしたとして、戴冠の権利を主張します。一方で、義務を放置したまま弁論家を雇って権利を主張する競合相手や、その公的義務(レイトゥルギア)を他者に安価で下請けに出していた不正を暴露し、厳しく糾弾します。このような富裕層の怠慢と私利私欲の追求が、市民の安全や国家の防衛を脅かしていることを陪審員に警告します。最後に、相手側の共同弁護人の不合理な態度を批判し、公的義務の名誉を守るために厳格で公正な判決を下すよう陪審員に訴えかけています。
弁論・修辞学3 チャンク · §1-8–§16-22267 対訳文読む →第十二弁論 ピリッポス書簡
Philip’s Letter本作は、マケドニア王フィリッポス2世がアテナイ市民に向けて送ったとされる書簡形式の弁論である。著者は、アテナイ側が犯した数々の平和条約違反や敵対行為を具体的に列挙し、その不当性を激しく追及する。前半では、マケドニアの伝令官の監禁やペルシア王との内通といった具体的な不法行為が告発される。中盤では、カルディアやペパレトスなどの係争地をめぐる紛争において自らの正当性を主張し、アテナイ側の二重基準を批判して裁判による解決を促す。後半では、アテナイが裁判や和平交渉を拒否し、アンフィポリスの領有権を不当に主張し続けていることを論駁する。最終的にフィリッポスは、歴史的かつ法的な正当性が自らにあることを宣言し、アテナイの不法行為に対して自衛の決意を表明して締めくくる。
弁論・修辞学3 チャンク · §1-8–§17-23258 対訳文読む →第六十一 恋について
The Erotic Essay本作は、若きエピクラテス(Epikrates)に向けて、彼の美徳を称賛し、将来の指針を示すために書かれた修辞学的な演説(弁論)です。語り手はまず、エピクラテスの類稀なる容姿の美しさと魂の節度を称え、彼に有益な人生の助言を与えようと試みます。続いて、彼が市民の競技である「アポバテース(戦車下車)競技」に挑み、劇的な勝利を収めた際の勇敢さと技術を振り返り、その輝かしい資質を絶賛します。しかし、優れた天性を真の卓越性へと高めるためには、心智を鍛える「哲学(philosophia)」の学びが不可欠であると説きます。ペリクレスなどの偉大な先人たちの例を引きつつ、将来の国政での活躍に向けて、哲学の習得と良き友人との交わりに励むよう促して論を締めくくっています。
弁論・修辞学7 チャンク · §1-7–§49-57575 対訳文読む →第一弁論 オリュントス情勢 第一演説
The First Olynthiac本作は、マケドニア王フィリッポス2世の脅威に対抗するため、アテナイの政治家デモステネスが市民に迅速な行動を促した民会演説である。オリュントスからの同盟と支援の要請という絶好の機会を前に、演者はアテナイ市民に対し、過去の不作為が敵の台頭を許したことを鋭く指摘する。彼は、この危機をアテナイを救う最後の好機と位置づけ、放置すれば戦争がアッティカ本土に及ぶと警告する。その上で、オリュントス救援と敵地攻撃の二方面作戦、およびそれを支えるための軍資金調達を提案する。最後に、フィリッポスの権力の脆さを説き明かし、市民の決断と早急な出兵を強く訴えかけている。
弁論・修辞学4 チャンク · §1-8–§22-28353 対訳文読む →第四弁論 ピリッポス弾劾 第一演説
The First Philippic本書は、マケドニア王フィリッポスの台頭という危機に直面したアテナイ市民に対し、迅速な軍事的・財政的行動を促す演説です。著者はまず、過去の怠慢こそが今後の好転への希望の根拠であると語りかけ、市民の主体的な防衛準備を強く要求します。議論の中盤では、不測の事態に迅速に対応するための常設軍(歩兵と騎兵、快速船など)の具体的な兵力構成や、維持に必要な財源と冬営地の確保について現実的な計画を提示します。さらに、アテナイの場当たり的な防衛策を「野蛮人のボクシング」に例えて鋭く批判し、常に後手に回る現状からの脱却を訴えます。最後は、虚妄な噂話に惑わされることなく、市民自らが軍を率いて敵地を直接攻撃し、主体的に国の未来を切り開くべきであると結論づけます。
弁論・修辞学7 チャンク · §1-6–§45-51669 対訳文読む →第十弁論 ピリッポス弾劾 第四演説
The Fourth Philippicデモステネスによる本作は、マケドニア王フィリッポス2世の軍事的脅威が迫るなか、アテナイ市民に決断と行動を促す政治演説である。演者は、フィリッポスが和約を無視して各地で侵略を続け、アテナイの民主制そのものの破壊を目論んでいる現状を警告する。そのうえで、場当たり的な対応を排し、常備軍の組織やペルシアとの同盟交渉、財政・軍事体制の厳格な管理といった具体的対抗策を提示する。また、国内を分断している観劇手当(テオーリコン)をめぐる貧富の対立を解消し、市民が一丸となって国難に当たるべきだと説く。さらに、平和を口実に不作為を推奨し、敵に買収されて国家を危機に陥れる親マケドニア派政治家の欺瞞を厳しく告発する。市民が甘言に耳を貸すのをやめ、主体的かつ現実的な防衛行動を起こすことを強く求めて演説を結ぶ。
弁論・修辞学9 チャンク · §1-7–§69-76780 対訳文読む →第六十弁論 葬送演説
The Funeral Speech本作は、アテナイのために戦死した市民を追悼し、その功績を称えるために行われた葬送演説(エピタフィオス・ロゴス)である。演説者はまず、戦死者を公葬にするアテナイの国法を称え、彼らの高貴な血統と大地の恵みについて語る。続いて、アマゾネスやペルシア軍の撃退といった先祖たちの神話的・歴史的な偉業を振り返り、死者たちの徳の背景にある民主政の気風と部族ごとの誇りを明らかにする。さらに、故人たちの生前の徳と戦場での勇敢な死を称え、彼らの勇気がもたらした成果を論じる。最後に、各部族の模範を示しつつ、残された遺族に対して、悲しみに暮れるのではなく死者が得た永遠の栄誉を誇りとして耐え抜くよう諭し、国葬の儀礼を締めくくる。
弁論・修辞学5 チャンク · §1-7–§30-37414 対訳文読む →第二弁論 オリュントス情勢 第二演説
The Second Olynthiac本作は、アテナイの政治家にして弁論家デモステネスが、マケドニア王フィリッポス2世の脅威に対抗するため、民会でアテナイ市民に送った政治演説である。デモステネスは、フィリッポスの急速な台頭はアテナイ側の怠慢が原因であると厳しく指摘し、今こそ行動を起こすべきだと説く。彼はフィリッポスの覇権が不正と欺瞞の上に築かれた極めて脆弱なものであるとし、同盟関係の揺らぎやマケドニア内部の不和を暴露していく。さらに、敵が精力的に動く一方でアテナイ市民が無為に座視している現状を批判し、かつてギリシアの自由のために戦った祖先の勇気を呼び覚ますよう訴えかける。最後に、これまでの軍劇的失敗や長期化の原因として政治的内紛やシュンモリア(課税分担)制度の派閥化を指摘し、市民一人ひとりが義務と負担を平等に分かち合い、団結して行動することを強く促して演説を締めくくる。
弁論・修辞学4 チャンク · §1-8–§25-31349 対訳文読む →第六弁論 ピリッポス弾劾 第二演説
The Second Philippic本作は、古代ギリシアの弁論家デモステネスが、急速に勢力を拡大するマケドニア王フィリッポス2世の脅威に対して、アテナイ市民に警鐘を鳴らし行動を促した政治演説です。デモステネスはまず、フィリッポスの侵略政策とアテナイ側の怠慢な現状を対比させ、事態の深刻さを訴えます。次いで、フィリッポスが自由を重んじるアテナイを最大の障壁とみなし、テーバイなど他国と結託してアテナイ打倒を狙っている構図を明らかにします。彼は過去に騙された都市の歴史的教訓から、僭主に対する最大の防衛策は『不信(アピスティア)』であると説き、市民の覚醒を促します。最後に、かつて甘言で偽りの和約をもたらした売国奴たちの責任を厳しく追及し、目前に迫るアッティカ侵攻の危機を警告して、悲惨な戦争を回避するための決断を迫ります。
弁論・修辞学4 チャンク · §1-9–§29-37394 対訳文読む →第三弁論 オリュントス情勢 第三演説
The Third Olynthiac本作は、マケドニア王フィリッポス2世の脅威に直面するアテナイにおいて、同盟市オリュントスの救済と国家の抜本的な改革を訴えたデモステネスによる政治演説です。アテナイの民会を舞台に、著者は市民に向けて、過去の遠征の不手際を反省し、直ちに行動を起こすよう促します。演説の中盤では、迅速な出征を妨げている「観劇手当(テオーリカ)」に関する法律の廃止を求め、耳に心地よい言葉ばかりを語る現代の弁論家や、責任転嫁を繰り返す市民の姿勢を鋭く批判します。さらに、かつての輝かしい先祖の功績と公共心の高さを提示し、私利欲に走る現代の指導者や堕落した現状と対比させます。最終的に著者は、民衆が依存から脱却し、市民全員が国のためにそれぞれの役割と義務を果たす組織改革を断行するよう強く呼びかけます。
弁論・修辞学5 チャンク · §1-7–§31-36501 対訳文読む →第九弁論 ピリッポス弾劾 第三演説
The Third Philippic本作は、古代ギリシアの弁論家デモステネスがアテナイ市民に向けて行なった、マケドニア王フィリッポス2世の脅威を訴える政治演説です。デモステネスはまず、アテナイ市民の怠慢が現状の危機を招いたと厳しく指摘する一方、今から行動を起こせば事態は改善可能であると説得を試みます。彼は、フィリッポスが平和を装いながら着実に侵略を進めている実態を暴き、かつてのギリシア人が持っていた自由への熱意と、賄賂や内紛に塗れた現在の退廃ぶりを対比させます。さらに、敵の新たな戦術や、マケドニアに懐柔された裏切り者によって他都市が辿った悲惨な滅亡の歴史を警告として提示します。最終的に演説は、アテナイが防備を固めて主体的に行動し、他都市やペルシアとも同盟を構築してフィリッポスに立ち向かうべきであるという強い決意と具体的な提案で締めくくられます。
弁論・修辞学9 チャンク · §1-6–§68-76847 対訳文読む →

